年収交渉のタイミングと言い方|例文と提示額の見抜き方【20代転職】
内定は出ましたが、提示された年収が低くてひとこと言いたい。それでも「強欲だと思われて落とされたら」が怖くて、何も言えないままサインしてしまいそうになっていませんか。
黙って承諾すると、その金額が入社後にすぐ動くことは、まずありません。基本給は昇給や賞与の計算の土台になるので、入口の差はあとまで残ります。
私自身、29歳の転職では増額の一言が怖くて言えませんでした。それでも、求人の選び方と返事の待ち方を変えるだけで、入社時の年収は下げずにすみました。
この記事では、年収交渉をいつ・どう切り出すか、提示された金額が本当に得なのかを見分ける方法、そのまま使える例文までを、内定から承諾までの流れに沿って整理します。読み終えるころには、目の前の労働条件通知書のどこを確認して、何と伝えればいいかがはっきりします。
交渉のヤマ場は、書面が出てから承諾のサインをするまでの数日間です。
- 交渉のヤマ場は書面提示後〜承諾のサイン前。承諾後は原則動かせません
- 提示額は、基本給・固定残業代・賞与が確定かどうか・実際の労働時間の4つで見極めます
- 面接で今の年収を手取りの数字で伝えていたら、額面に言い直します。これは交渉ではなく訂正です
転職の年収交渉はしていい|「確認・訂正・増額」を分けて考える

提示された年収は今より高いはずなのに、見込み残業まで入れて計算すると、実はほぼ変わりません。それでも「交渉して内定を取り消されたら」と考えると、言い出せずにいませんか。
年収交渉はして大丈夫です。内定後の条件のすり合わせは、企業にとって採用活動の一部で、想定内のやり取りだからです。
マイナビの転職動向調査(2024年実績)では、転職後に年収が上がった人は4割弱、下がった人も2割強いました。転職すれば必ず上がるわけではなく、結果は提示条件しだいです。だからこそ、提示額をそのまま受けるかどうかは、中身を見てから決める価値があります。
交渉でやることは、次の3つに分かれます。
- 確認:固定残業代や賞与の内訳を聞く
- 訂正:面接で今の年収を手取りの数字で答えていたら、額面に言い直す
- 増額:提示より高い額を希望する
見落とされがちなのが、真ん中の訂正です。企業は、あなたの今の年収(額面)を目安のひとつにして提示額を決めます。たとえば源泉徴収票の支払金額が400万円の人が、面接でうっかり手取りの「320万円です」と答えると、企業には80万円低く伝わってしまいます。
だから、気づいた時点で額面に言い直しましょう。手取りは人によって変わるので、伝える数字は源泉徴収票の「支払金額」になります。これはお金をねだる交渉ではなく、事実の訂正です。賞与の月数を聞く確認も当然の質問で、どちらも失礼にはあたりません。気をつかうのは増額だけで、それも伝え方しだいで印象は変わります。
一番の心配は「交渉したら内定を取り消されないか」だと思います。正式に内定が出たあと、承諾する前に、根拠を添えて一度だけ相談する。この範囲なら、相談したこと自体が取り消しの理由になることは、まず考えにくいです。揉めるのは、何度も蒸し返した場合や、相場からかけ離れた額を根拠なく迫った場合です。
ただし、給与テーブルが固定の会社や、初任給が等級で決まる未経験枠では、頼んでも金額が動きにくいのが実情です。提示額がすでに相場どおりなら、無理に上げにいく必要はありません。

私も最初の転職では、増額なんて怖くて切り出せませんでした。でも確認と訂正は、ただの質問と言い直しです。そこから始めれば十分です。
年収交渉のタイミングは内定後だけじゃない|選考〜承諾前の流れ


「交渉は内定が出てから」とよく言われます。ただ、それだけを信じていると、最終面接で希望を伝える場面を素通りしてしまいます。年収の話が動くタイミングは、実は2回あります。
| タイミング | やること | 条件交渉の扱い |
|---|---|---|
| 最終面接 | 「希望年収は?」に、希望額と任される役割をすり合わせる | 吊り上げる場ではなく、根拠を置く場。提示額そのものが変わることもあります |
| 書面提示後〜承諾前 | 金額と内訳を確認し、必要なら一度だけ相談する | 企業も想定内。ここが交渉の本番で締め切りです |
| 承諾のサイン後 | 提示条件を受け入れた扱いになる(メール・口頭の「承諾します」も含む) | 変更を求める理由が弱くなり、まず通りません |
締め切りが「承諾前」なのは、内定が「この条件で働きます」という合意で成り立つからです。書面・メール・口頭を問わず、承諾を伝えると条件に同意した扱いになるので、疑問が残っている段階では承諾の言葉を出さないでください。
提示を受けたら、先に「お返事はいつまでですか」と期限を確認しておきます。数日の猶予があるだけで、慌てて承諾せずに中身を確かめられます。
承諾したあとでも、問い合わせていい場合があります。
- 口頭の説明と書面の金額が食い違う:交渉ではなく事実確認。当時のメールや求人票を添えれば、直してもらえることがある
- 健康診断や卒業などの条件つき内定:通知書の取り消し条件を読み、はっきりしなければ採用担当に確認する
- 正式な内定を承諾したあとの取り消し:労働契約が成立したとみなされ、正当な理由のない取り消しは認められにくい
金額の相談や訂正をしたら、直した内容が反映された労働条件通知書をあらためて受け取り、それからサインをします。口頭の「上げておきます」だけで承諾すると、あとで確かめる手段がありません。
なお、複数の内定を並べてどちらを承諾するか迷っているなら、比べ方はこちらの記事にまとめています。








「比較して決めたい」と正直に伝えて、期限を延ばしてもらうのはよくある動き方です。延ばせないと言われたら、元の期限までに決めるのが前提になります。
提示額を「保証年収・想定年収・実働時給」で見抜く


提示された年収が得か損かは、金額の大きさより中身で決まります。同じ「年収410万円」でも、時給に直すと今の職場より低いことがあるからです。見るのは、基本給・固定残業代・賞与が確定かどうか・実際の労働時間の4つだけです。
まず「確実に入る額」を仕分ける
求人票で大きく書かれた金額には、業績賞与や想定残業代など、確定していないお金が混ざっています。そこから確定分だけを残した金額を、この記事では「保証年収」と呼びます。
- 保証年収:固定月給×12+支給が確定している賞与・手当(確実に入る額)
- 想定年収:保証年収+業績賞与や想定残業代など変動する分(うまくいけば届く額)
- 実働時給:保証年収÷1年間の実働時間
毎月かならず出る固定残業代は、保証年収に入れてかまいません。分けて見るのは「業績しだい」の賞与です。年俸制やインセンティブでも考え方は同じで、確定分と変動分に振り分ければ同じものさしで比べられます。


月給30万円で「実際の時給」を計算する
例として、月給30万円の求人で実際の時給を計算してみましょう。使う数字は3つだけです。
- 月給30万円=基本給25万円+固定残業代5万円(20時間分)
- 賞与は基本給の2か月分=50万円。想定年収は30万円×12+50万円=410万円
- 賞与が業績連動で保証されないなら、確実に入る保証年収は360万円
| 計算ステップ | 残業0時間 | 固定残業20時間分働く |
|---|---|---|
| 月の所定労働 | 160時間 | 160時間 |
| 年間の所定労働 | 1,920時間 | 1,920時間 |
| 年間の固定残業 | 0時間 | 240時間 |
| 1年間の実働時間 | 1,920時間 | 2,160時間 |
| 実働時給(360万円÷実働時間) | 約1,875円 | 約1,667円 |
同じ360万円でも、残業ゼロなら時給約1,875円、固定残業の20時間分を毎月働くと約1,667円で、1割以上の差が出ます。
実際の残業がどちらに近いかは求人票では読めないので、配属予定部署の月平均残業時間を採用担当に聞いて、その時間で試算します。出てきた時給は、相場や担当業務と照らして希望額を決める判断材料になります。
なお、固定残業の20時間は残業の上限ではなく、先に支払われている時間数です。実際の残業に対する法定の割増賃金が固定残業代を上回れば、会社はその差額を別途支払う必要があります。求人票にその扱いの記載がなければ、内定後に確認する項目へ加えておきましょう。
ほかにも、見落とすと確実に入る額が数十万円ぶれる項目があります。
- 固定残業代の金額と時間数(超えた分の割増は別払いか)
- 賞与は月給基準か基本給基準か(基本給基準だと小さい)
- 試用期間中の給与は下がるか(初年度の保証年収に影響)
- 住宅・資格・役職手当の条件(対象外なら想定年収に入らない)
- 昇給や賞与の土台になる基本給(低いと将来の伸びも鈍い)
他社と比べるときは、保証年収と実働時給の2つで並べれば十分です。提示額が大きいほうが、時給では低かったという逆転にも気づけます。






「額面の8割が手取り」のような一律換算は、扶養や住民税で人によってずれます。比べるなら、確実に入る額と時給のほうが確かです。
【状況別】年収交渉の言い方・例文


言い方は、場面ごとに用意しておくと迷いません。前提はひとつ、金額はすべて額面でそろえることです。
その前に、希望額をどう決めるか
例文の「◯◯万円」を埋める数字を、先に用意します。
- 担当する職務の提示帯(求人票に書かれた金額の幅)
- 同職種・同年代の相場
- 今の額面年収
- 「これを下回るなら辞退する」という最低ライン
相場は、同じ職種・年代・エリアの求人をいくつか見比べてつかみます。よく言われる目安は現年収の1〜2割上ですが、職務や希少性で変わる補助線です。希望額の軸は、相場の範囲内で今の額面年収より少し上に置きます。
今が相場より低い人や離職中の人は、現年収ではなく相場を軸にします。最低ラインは口に出さず、自分の判断用に取っておきます。
「△△の実績」に入れるのは、数字で語れるものです。売上や改善率、担当した規模、資格などが当てはまります。「生活費が上がった」は、残念ながら理由として弱く見えます。
内訳を確認したいとき
増額の前の「確認」です。当然の質問なので、身構えずに聞けます。
「ご提示ありがとうございます。基本給と固定残業代の内訳、それに固定残業の時間数を教えていただけますか。あわせて、賞与は月給と基本給のどちらを基準に、何か月分でしょうか」
面接で希望年収を聞かれたとき
金額だけを即答せず、根拠と幅を添えます。
「現在の額面年収が◯◯万円です。御社で担当する◯◯の業務では、前職での△△の経験を活かせると考えています。◯◯万円を軸に希望しますが、役割に応じてご相談させてください」
手取りと額面を言い間違えたとき
これは増額のお願いではなく、単位の訂正です。低姿勢で、事実だけを言い直します。
「面接で、今の年収を手取りの金額でお伝えしてしまいました。正しくは、源泉徴収票の額面で◯◯万円です。前提がずれていたため、訂正させてください」
書面が出たあとに増額を相談するとき
労働条件通知書の内訳を確認してから、根拠を添えて頼みます。回数は一度きりです。
「ご提示ありがとうございます。基本給◯◯万円、固定残業代◯◯万円(◯時間分)、賞与の条件を確認しました。担当する◯◯業務と△△の実績を踏まえ、額面年収◯◯万円へのご調整は可能でしょうか。難しい場合は、今回のご提示のまま前向きに検討いたします」
最後の「難しければ今の提示で検討します」は、今の条件でも入社する気があるときに添える逃げ道です。この一言があると、印象を保ったまま切り出せます。上がらなければ辞退するつもりなら、代わりに「持ち帰って検討させてください」と締めます。やり取りは、記録が残るメールが無難です。
エージェント経由で応募したとき
自分からは言わず、担当者に任せます。
「額面年収で◯◯万円を希望します。根拠は、担当する◯◯業務で△△の経験を活かせる点です。自分では言い出しにくいので、条件のすり合わせをお願いできますか」
窓口を一つにするため、企業へ直接は伝えません。それから、もらってもいない他社の提示額を盛るのは厳禁です。嘘は入社後まで響きますし、信用も失います。






増額のお願いは、断られたら潔く引くのが目安です。同じ額で粘ると、入社前から気まずさが残ります。
年収交渉が通らない・苦手なときの選択肢とエージェント活用


根拠をそろえて頼んでも、金額が動かないことはあります。断られてから固まらないように、選択肢を3つ持っておきます。
| 選択肢 | 選ぶ目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 提示条件のまま承諾 | 年収差が数万円ほどで、仕事内容に納得できる | 金額以外の条件も含めて判断する |
| 辞退 | 生活が回らないほど年収が下がる | 無理に承諾せず、次を探す |
| 昇給条件を確認して承諾 | 昇給の時期と評価基準を書面に残してもらえる | 口約束だけなら参考程度。応じてもらえないことも多い |
迷ったら、まず確実に入る額が自分の最低ラインを下回っていないかを確認します。そこを割っていなければ、あとは仕事内容と労働時間に納得できるかで決めます。
増額が無理でも、入社時期・任される役割・半年後の見直し時期のような、金銭以外の条件なら相談の余地が残ります。年収で折り合えないときは、働き方の条件に切り替えるほうが現実的です。
提示額が今より下がるときに受けるか辞退するかの線引きは、「転職で年収が下がる判断基準」の記事にまとめました。


そもそも交渉が苦手なら、勝負どころを前に動かすやり方もあります。応募の段階で年収帯の合う求人に絞り、本命の最終面接を近い日程にそろえて、条件を横並びで比べる。金額の勝負を、交渉ではなく求人選びで終わらせる作戦です。
29歳の転職のとき、私は「口下手な自分に交渉なんて無理だ」と最初から諦めていました。だから、dodaに登録して翌日に届いた約20件から、興味を持てる求人を年収の高い順に受けただけです。
内定後に「早く決めてほしい」と急かされたときは、「断ったら取り消されるかも」とひやひやしながら、「他社も見てから決めたい」と伝えました。実際はあっさり待ってもらえて、入社時の年収は前職からプラス50万円でした。交渉らしい交渉は、一度もしていません。
ただ、どの会社がいくらまで払えるかは、求人票だけでは読めませんでした。そこを教えてくれるのが、毎日たくさんの提示額を見ている転職エージェントです。
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相談したからといって、その場で転職を決める必要はありません。立ち位置の確認だけでも十分に使えます。
まとめ|年収交渉は「見抜いてから、一度だけ丁寧に」
年収交渉は、度胸の勝負ではありません。提示額の中身を見て、確認・訂正・増額を分けて、承諾する前に丁寧に伝える。手順にしてしまえば、口下手でも損は防げます。
ここまで読んだあなたなら、労働条件通知書のどこを見て、何と伝えればいいかは整理できたと思います。
今日やることは一つです。提示額を基本給と固定残業代に分けて書き出し、実働時給を出してみてください。数字にすると、上げにいくべきか、そのまま受けていいかの見当がつきます。
動き出してみると、あれほど怖かった一言が、あっさり通ることもあります。年収そのものを大きく上げたい人は、「20代で年収を100万上げる方法」の記事もあわせてどうぞ。
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