傷病手当金と失業保険を両方受け取る方法|順番・条件・手続きの流れ
病気やけがで働けなくなったのに、もらえるお金の名前も窓口も分からず、調べるだけで疲れていませんか。働けないあいだに健康保険から出るお金を傷病手当金といいます。傷病手当金も失業保険も、自分で申請しなければ1円も入りません。
しかも退職日に出勤してしまうと、退職後に受け取れるはずだった傷病手当金が出なくなります。知らないまま退職日を決めると、あとから取り返せません。
私自身、失業給付はハローワークへ申請して受け取りました。この記事では、2つがどんなお金かという説明から、もらえる条件、申請のしかた、切り替えの手順までをたどります。すべて協会けんぽとハローワークの公式の案内に沿った内容です。
読み終えるころには、いまの自分が次にどの窓口へ何を持っていけばいいかが分かります。順番そのものは最初から決まっていて、傷病手当金が先で、失業保険はあとです。
- お金が入る順番は傷病手当金が先、失業保険があと。同じ日の分は両方もらえない
- 傷病手当金は1日あたり、休む前の給料のおよそ3分の2が目安。通算1年6か月まで受け取れる
- もらう条件は4つ。つまずくのは待期3日の数え方で、療養で働けなかった日が3日続けば成立する
- 退職後も続けるには条件が2つ増える。健康保険に途切れず1年以上入っていたことと、退職日の前日までに待期3日を終えて退職日も休むこと
- 失業保険を受け取れる期限(受給期間)は離職日の翌日から1年。退職から31日目以降に延長を出さないと、療養しているあいだに1年が減って日数を使い切れない
傷病手当金と失業保険は、出どころも条件も違う別の制度

「傷病手当金と失業保険、結局どっちがもらえるんだろう」と、名前だけ知った状態で調べ始めていませんか。2つは別々の保険から出るお金で、同じ日の分を両方受け取ることはできません。
働けない間に出るのが傷病手当金、働ける状態に戻って次の仕事を探す間に出るのが失業保険だからです。制度の名前を覚える必要はなく、押さえるのは「どちらの保険から出るのか」と「自分がいまどちらの状態か」の2つだけです。
傷病手当金は健康保険から、失業保険は雇用保険から出る
給与から毎月引かれている社会保険料は、健康保険と雇用保険という別々の制度に分かれて納められています。傷病手当金は健康保険から、失業保険は雇用保険から出るお金です。
| 傷病手当金 | 失業保険(失業給付) | |
|---|---|---|
| どこから出るか | 健康保険 | 雇用保険 |
| どんなときに出るか | 病気やけがで働けないとき | 働ける状態で次の仕事を探すとき |
| 1日あたりいくらか | 休む前の給料のおよそ3分の2 | 賃金日額のおよそ5〜8割 |
| どれくらいの長さか | 通算1年6か月まで | 一般の離職者で加入10年未満なら90日分 |
| 申請する窓口 | 加入していた健康保険 | 住んでいる地域のハローワーク |
表にある「賃金日額」は、辞める前6か月の給料をもとに出した1日あたりの額です。なお「失業保険」は通称で、公式には雇用保険の失業給付、そのうちの基本手当と呼ばれます。呼び方は違っても、指しているものは同じです。
雇用保険そのものに入れる条件や、加入期間が足りないときにできることは雇用保険の受給条件で扱っています。
働けない人に出る傷病手当金、働ける人に出る失業給付
2つのお金は、支給の条件でそれぞれ反対の状態を求めています。
- 傷病手当金:「仕事に就くことができない」人に出る(協会けんぽ)
- 失業給付:「いつでも就職できる能力」があり、就職の意思と求職活動があるのに職業に就けない人に出る(ハローワークインターネットサービス)
働けないから傷病手当金、働けるから失業給付。同じ日について両方の条件を満たすことはないので、片方が終わってからもう片方へ移ります。振り込まれる月が重なっても問題はなく、どちらの制度も「どの日の分として出るお金か」で見ます。
受け取る順番は3ステップ
傷病手当金が終わっても、まだ働けないうちは失業給付を申請できません。療養中は「いつでも就職できる」という条件を満たさないからです。そのため療養が長引くと、どちらも入らない時期ができます。
そこで、傷病手当金を受け取っている間に出しておくのが失業保険の受給期間の延長です。失業給付を受け取れる期間は離職日の翌日から1年と決まっていて、療養している間もその1年は減っていきます。延長を出しておけば、受け取れる期間を働けなかった日数の分だけ先へ延ばせます。
| 順番 | やること | 入ってくるお金 |
|---|---|---|
| ① | 傷病手当金を受け取る(在職中から退職後まで) | 休む前の給料のおよそ3分の2が目安 |
| ② | 傷病手当金を受け取りながら、失業保険の受給期間の延長を出す(退職から31日目以降) | なし(受け取れる期間を先へ延ばすだけ) |
| ③ | 働ける状態に戻ってから、失業給付を受け取る(お金が出ない待期7日と給付制限のぶん空く) | 賃金日額のおよそ5〜8割 |
真ん中の②は、手続きをしても1円も入りません。それでも手続きをしておくのは、出さないまま時間が過ぎると、働ける状態に戻ったときに日数を使い切れないことがあるからです。②は、もらうためではなくつなぐための手続きです。
退職から30日以内に働ける状態へ戻った人は、②を飛ばして③へ進みます。②を出せるのは「働けない状態が30日以上続いた」あとなので、早く回復すればそもそも出番がありません。
③にある待期と給付制限は、どちらも失業給付が出ない期間のことです。待期は求職を申し込んだあとの最初の7日間で、全員が通ります。給付制限は待期の7日が終わったあとに続く期間で、自己都合で辞めた人に付きます。
名前が似た3つの言葉を取り違えない
検索していると、よく似た言葉が3つ出てきます。この記事の主役は1つ目の傷病手当金です。1字違うだけで別の制度なので、最初に分けておくと混乱しません。
| 名前 | 何の制度か |
|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険。業務外の病気やけがで働けないときに出る |
| 傷病手当 | 雇用保険。求職の申し込み後に15日以上働けなくなったときに出る |
| 退職給付金 | 制度ではない。広告で使われる俗称 |
「退職給付金がもらえる」という広告を見かけても、そういう名前の制度はありません。中身は傷病手当金や失業給付のことを指しています。
その広告の先にあるのが、申請を有料で手伝うとうたう民間のサービスです。相談として国民生活センターに持ち込まれた契約は、平均で約29万円でした。

いまの段階で、最初にやることが変わる
この記事が想定しているのは、在職中に働けなくなった人か、その状態で退職した人です。退職したあとに病気やけがで働けなくなった場合は、辞めた会社の健康保険から傷病手当金を受け取れません。退職日の時点で条件を満たしていないからです。
いまいる段階は、大きく次の4つに分かれます。
| いまの段階 | 最初にやること |
|---|---|
| まだ在職中(休職中) | 加入している健康保険に、傷病手当金が出るか確かめる |
| 退職した直後 | 健康保険を切り替える(辞めた会社の健康保険に個人で入り直す任意継続を選ぶなら20日以内) |
| 退職から30日を過ぎ、まだ働けない | 失業保険の受給期間の延長を出す |
| 主治医から働けると言われた | 失業給付の手続きを始める |
あとから取り返しがつかないのは、在職中の判断です。退職日の過ごし方ひとつで、退職後に傷病手当金を受け取れるかどうかが変わります。

最初から全部を覚える必要はありません。いまの段階に当てはまるところだけ読んで動き、次の段階に進んだらまたこの記事に戻ってくる読み方で十分です。
傷病手当金をもらえるのは、どんな人か。条件は全部で6つ


「これくらいの症状で申請していいのか」と、自分で線を引いてしまいそうになりますよね。決めるのは本人ではなく健康保険なので、当てはまるかどうかだけを見れば十分です。
条件を見る前に、前提が1つあります。傷病手当金があるのは、勤務先の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)です。自営業やフリーランスで国民健康保険だけに入っている人には原則ありません。会社員として給与から健康保険料が引かれていたなら、制度の対象になります。
在職中にもらうための条件が4つ、退職後も続けるための条件が2つあります。専門的な判定は要らないので、順番に確かめていきましょう。
傷病手当金をもらうための4つの条件
協会けんぽが示している支給の条件は、次の4つです。
- 業務外の病気やけがの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
4つ目は「1円も出ていないこと」ではありません。給与が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。給与が傷病手当金の額以上に出た日だけが、対象から外れます。
原因が仕事や通勤にあるなら、先に労災を確かめる
1つ目の条件にある「業務外」の裏返しで、原因が仕事や通勤にある場合は、傷病手当金ではなく労災保険の対象です。休業4日目から給付基礎日額の60%が出て、休業特別支給金の20%が上乗せされます。計算のもとになる額が傷病手当金とは違うので単純には比べられませんが、原因が仕事にあるなら労災が先です。
長時間労働やハラスメントに心当たりがあるなら、勤務先を管轄する労働基準監督署へ先に相談してください。労災かどうかの判断には時間がかかることもあるので、その間の生活費については加入している健康保険にも聞いておくと安心です。
2つ目「仕事に就くことができない」は、いまの仕事ができない状態
4つの条件のうち、いちばん誤解されやすいのが「仕事に就くことができない」です。どんな仕事も一切できない状態ではなく、いま就いている仕事ができない状態を指します。次のような状態でも、対象になることがあります。
- デスクワークなら短時間できるが、いまの仕事は立ち仕事が中心
- 家の中では動けるが、通勤と接客には耐えられない
判断するのは健康保険で、医師の意見と本人の仕事の中身を見て決めます。
私も前職で、仕事のストレスから眠れない夜が続いた時期があります。寝ついても仕事の悪夢で目が覚めるのに、頭のほうは「まだ頑張れる」と思っていました。体が先に限界を知らせていたのに、自分では働ける側だと判定していたわけです。
だからこそ、症状と仕事の中身をそのまま医師に伝えるところから始めてください。自己判断で「この程度では無理だろう」と決めてしまうと、条件を満たしているのに申請しないまま終わります。
3つ目の待期3日は、数え方でつまずく人が多い
3つ目にある連続3日間の休みは「待期3日間」と呼ばれます。数えるのは、療養のために働けなかった日です。無給である必要はなく、その日が有給休暇でも土日祝の公休日でも数に入れられます。
ここでつまずくのは、療養と関係なく休んだ日まで数えてしまうケースと、途中で1日でも働いてしまうケースです。2日休んで3日目に出勤すると待期は成立せず、そこから数え直しになります。3日連続で休んで初めて、4日目以降が支給の対象になります。
- 月・火・水と3日続けて休む → 待期が成立し、木曜から対象になる
- 月・火と休んで水曜に出勤 → 待期は不成立。あらためて3日続けて休む必要がある
- 土曜から働けない状態で土・日・月と休む → 土日も数に入るので成立する
1日あたりの金額と、受け取れる長さ
標準報酬月額とは、社会保険料を決めるために給料をランク分けした額です。1日あたりの傷病手当金は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、3分の2を掛けて出します。
加入が12か月に満たない場合は、その期間の平均と、加入先が定める平均額の低いほうを使います。協会けんぽなら32万円なので、自分の平均がそれを上回る場合は、下の表の32万円の行が上限になります。
| 標準報酬月額の平均 | 1日あたり | 30日分の目安 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,450円 | 約13万3,000円 |
| 26万円 | 約5,780円 | 約17万3,000円 |
| 32万円 | 約7,110円 | 約21万3,000円 |
端数処理があるため、実際の額は加入している健康保険の計算で確定します。よく誤解されますが、手取りの3分の2ではありません。
受け取れる長さは、支給を開始した日から通算して1年6か月です。2022年1月から通算方式に変わったので、途中で復職した期間があれば、その分を後ろへ持ち越せます。
支給期間が終わっても働ける状態に戻らないときは、障害年金という別の制度が候補になります。障害年金の対象かどうかを判断する日(障害認定日)は原則として初診日から1年6か月で、傷病手当金の1年6か月(支給開始日から数える)とは数え始める日が違います。支給期間の終わりが見えてきた時点で、年金事務所へ相談してください。
5つ目と6つ目は、退職後も続けるための条件
退職後も受け取り続ける仕組みには「資格喪失後の継続給付」という名前がついています。ここまでの4つに次の2つが加わり、全部で6つになります。どちらも退職日の時点で満たしている必要があります。
- 5つ目:退職日までに、健康保険に入っていた期間(被保険者期間)が途切れず1年以上あること。任意継続・共済組合・国民健康保険の期間は含まない
- 6つ目:退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること
ここで数えるのは、雇用保険ではなく健康保険に入っていた期間です。1年に足りているかどうかは、勤務先から渡された「資格情報のお知らせ」やマイナポータル、資格確認書で確かめられます。
転職していても、1年に届かないと決めつけるのは早すぎます。健康保険が1日も途切れずに続いていれば、前の会社の期間も足せます。加入先に聞けば通算した期間が分かります。1年に届かなかった場合でも、在職中に受け取った分は残ります。
6つ目の「退職日の時点で受けられる状態にあること」は、退職日をいつにするかだけで決まります。日付の並べ方ひとつで結果が変わるので、実際の並びで確かめてください。







6つの条件を自分で判定しようとせず、加入している健康保険に電話するのが早道です。「休んでいるのですが対象になりますか」と聞けば、必要な項目は担当者が順番に確認してくれます。
退職後の傷病手当金は、退職日の決め方で決まる


「会社を辞めたら止まってしまうのでは」と心配になる人は多いはずです。退職後も傷病手当金は受け取り続けられます。ただし、続くかどうかは退職日の決め方でほぼ決まります。
退職日が過ぎてしまうと、あとから条件を満たし直すことはできないからです。退職日を入れる前に、ここだけは確かめてください。
退職日の前日までに待期3日を終え、退職日は休む
6つ目の「退職日の時点で傷病手当金を受けられる状態にあること」で見るのは、待期3日を終える時期と、退職日に出勤したかどうかの2点です。条件から外れる人がいちばん多いところです。
待期3日は、退職日の前日までに終わっている必要があります。退職日が待期の3日目では足りません。水・木・金と休んで金曜が退職日、という並びだと条件から外れます。
2点目は、退職日に出勤しないことです。退職日に出勤した場合にどうなるかを、協会けんぽはこう言い切っています。
退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません
在職中に受け取った分まで消えるわけではありませんが、退職後の期間は対象外になります。あいさつに立ち寄っただけで必ず打ち切られる、とまでは決まっていません。それでも、判断が割れる材料をわざわざ作る必要はありません。
最終出社日は退職日より前にして、荷物の引き取りやあいさつもそこで済ませます。退職日が土日に当たっても、休んだ扱いになるので心配は要りません。
最終出社日のあとに有給休暇を消化するなら、その期間を待期に充てられます。協会けんぽも「待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれる」と案内しています。
- 待期に数えるのは療養のために休んだ日。有給休暇でも土日祝でもよい
- 退職日に有給を充てて給与が出ていても、業務外の療養・仕事に就けない・待期3日の3つを満たしていれば条件から外れない
退職後の健康保険は、3つから選ぶ
退職すると会社の健康保険から抜けるので、自分で次の保険に入ります。退職日に継続給付の条件を満たしていれば、どれを選んでも傷病手当金は受け取り続けられます。
- 家族の健康保険の被扶養者になる(保険料の負担なし。ただし傷病手当金も収入に数えられるので、額によっては入れない)
- 任意継続を選ぶ(辞めた会社の健康保険に、個人で入り直す。退職日の翌日から20日以内に申し出る)
- 国民健康保険に入る(14日以内に届け出)
見落とされやすいのは家族の扶養です。入れれば保険料の負担がゼロになりますが、受け取っている傷病手当金の額しだいで対象から外れます。日額がいくらかを伝えたうえで、家族の勤務先へ先に問い合わせてください。
遅れの影響がいちばん大きいのは任意継続で、申出書は20日以内と決まっています。20日を過ぎると、任意継続という選択肢そのものが消えます(協会けんぽ)。国民健康保険の届け出も14日以内ですが、遅れても加入はでき、資格は退職日の翌日にさかのぼります。
ネット上でよく誤解されているのが、継続給付と任意継続の関係です。
- 継続給付を受けるために任意継続を選ぶ必要はなく、国民健康保険に切り替えても受け取れる
- 任意継続の期間は「継続して1年以上」の計算に入らない
保険料がどれで安くなるかは人によって違います。心身の不調で辞めた人は国民健康保険料が軽くなる制度を使える場合があり、これは任意継続を選ぶと使えません。20日を過ぎる前に、任意継続と国保どっちが安いかで自分の条件に当てはめてみてください。
いったん働ける状態になると、退職後の分は再開しない
退職後の傷病手当金が在職中と決定的に違うのは、一度止まったあとの扱いです。協会けんぽは、こう書いています。
一旦仕事に就くことできる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません
つまり、症状がぶり返しても退職後の傷病手当金には戻れません。
- 在職中:通算1年6か月の枠が残っていれば、いったん復職しても後日また受け取れる
- 退職後の継続給付:一度でも働ける状態になったと判断されると、症状が戻っても再開しない
知恵袋には、取り返しがつかなくなった人の相談もありました。相談者は退職後に1か月だけ受け取り、体調が戻ったので失業給付へ切り替え、その1か月後にまた具合が悪くなっていました。付いた回答は「退職後は一度受給が途切れたら再受給できなくなります」でした(2026年3月29日の投稿)。
この仕組みがあるため、急いで失業給付へ切り替えるのが得とはかぎりません。傷病手当金が止まるのは書類を書いてもらった日ではなく、医師が示した「いつから働けるか」の日付です。医師が書くのは医学的な意見で、打ち切るかどうかを決めるのは健康保険です。
逆に、働けるようになったのに給付を続けたくて「まだ働けない」と申告し続けるのは不正受給です。健康保険では、不正に受けた給付が徴収されます(健康保険法58条1項)。失業給付でも、返還に加えて不正受給額の2倍以下の納付を命じられることがあります(雇用保険法10条の4第1項)。







医師には状況をそのまま伝え、支給するかどうかの判断は健康保険に委ねてください。日付がぎりぎりのときも、自分で結論を出さず加入している健康保険に確認するのが確実です。
傷病手当金の申請のしかた。会社に頼む範囲を先に決める


「また会社に連絡しないといけないのか」と、申請書を前に気が重くなりますよね。在職中の分でも退職後の分でも、使う用紙は同じ1種類で、会社が書くのは4ページのうち1ページだけです。
会社の記入が要るかどうかは、いつの分を申請するかで変わり、頼まずに済む場合もあります。まず用紙の分担から見ていきましょう。
申請書は4ページ、書く人は3人に分かれる
傷病手当金の支給申請書は全部で4ページあり、ページごとに書く人が決まっています。
| ページ | 書く人 | 中身 |
|---|---|---|
| 1〜2ページ目 | あなた | 氏名、口座、休んだ期間など |
| 3ページ目 | 会社(事業主) | 勤務状況と給与の支払い状況 |
| 4ページ目 | 医師(療養担当者) | 働けない状態であることの証明 |
用紙は加入している健康保険のサイトからダウンロードできます。1〜2ページ目に難しい記入はなく、休んだ日付と振込先を書くだけです。状況によって添える書類が増えることはあるので、出す前に加入先の案内も確かめてください。
退職後の期間だけなら、会社の証明が要らないことがある
分かれ目は、申請する期間に在職中の日が入っているかどうかです。在職中の日が1日でも入っていれば、その分には会社の記入が必要です。退職後の日だけなら、会社の証明なしで出せる場合があります。
協会けんぽは2026年1月に電子申請サービスを始めました。その必要書類を案内するページで、事業主証明についてこう説明しています。
事業主記入用にお勤め先の事業所に証明を受けてください。(資格喪失日以降の期間に関する申請については、アップロードは不要です。)
資格喪失日以降とは、退職日の翌日以降のことです。つまり電子申請で、退職後の日だけをまとめて申請するなら、会社の証明を取らずに出せます。
電子申請はマイナンバーカードによる認証で使い、カードがなければこれまでどおり紙で出せます。審査はどちらも同じです。
ただし紙で出す場合や、健康保険組合に入っていた場合は、運用が違うことがあります。「退職後の期間だけなら事業主証明は要りますか」と、加入していた健康保険に聞いてから動くのが確実です。
会社と医師に頼むときの出し方
在職中の期間を含む申請では、3ページ目の記入を会社に依頼します。といっても、やり取りは郵送だけで済みます。
- 返信用の封筒と切手を同封して、3ページ目だけを会社へ送る
- 記入されて戻ってきたら、1〜2ページ目と4ページ目をそろえる
- 4ページ分を自分で健康保険へ出す
3ページ目に病名を書く箇所はありません。この形なら、会社の目に触れるのは事業主記入欄だけです。
4ページ目の療養担当者記入欄は、主治医に依頼します。この記入は診療報酬の項目(傷病手当金意見書交付料・100点)になっています。1点10円で健康保険が使えるので、3割負担なら300円が目安です。
書類の封入や郵送、窓口への同行なら家族にも頼めます(本人の記入欄と署名だけは自分で書きます)。
振り込みまでの日数と、2年の時効
傷病手当金は、休んだ期間が過ぎてから申請するあと払いのしくみです。1か月分をまとめて出す人が多く、休み始めてすぐには入りません。協会けんぽは、審査で支払い可能となれば受付から10営業日以内に支払うと案内しています。健康保険組合は独自の運用なので、日数は加入先ごとに確認してください。
申請そのものにも期限があります。健康保険の給付を受ける権利は、働けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります(健康保険法193条)。退職日からまとめて2年ではなく、休み始めに近い日の分から順に消えていきます。
裏を返せば、退職から数か月が過ぎていても、まだ2年たっていない日の分はさかのぼって申請できます。全部をあきらめる必要はありません。
会社が書いてくれないときの相談先
3ページ目を書いてもらえないという事態も起こります。その場合は、加入していた健康保険へ事情を伝えれば、そこから先の進め方を案内してくれます。離職票(退職後に会社から届く、失業給付の申請に使う書類)が届かないときは、ハローワークが窓口です。
どちらも相談は無料で、電話1本で状況を伝えられます。会社と直接やり合う前に、公的な窓口へ先に相談してかまいません。







どうしても会社と話したくないなら、総務あてに用紙と手紙だけ送るところから始めてもかまいません。会社の記入が必要な申請でも、電話をしないと動かせない手続きではありません。
働けない間に出す、失業保険の受給期間の延長


「まだ働けないのに、失業保険の手続きなんてできるのか」と、後回しにしていませんか。働けない間にやるのは失業給付の申請ではなく、受け取れる期間を先へ延ばす手続きです。
先へ延ばしておかないと、体調が戻ったころには受け取れる日数が残りません。まず、期間のしくみから見ていきます。
失業保険の受給期間は1年。延ばせば最長4年になる
失業給付を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この1年を「受給期間」と呼びます。
受け取れる日数(所定給付日数)が残っていても、1年を過ぎた分は打ち切られます。ハローワークも「受給期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても支給されません」と案内しています。
病気やけが、妊娠、出産、育児などで引き続き30日以上働けないときは、働けなかった日数の分だけ受給期間を延ばせます。延ばせるのは最長3年間で、もとの1年と合わせて最長4年です。延長を出していないと、受給期間の1年は療養中もただ減っていきます。
実際に知恵袋には、傷病手当金が終わって失業保険へ切り替えたい段階で「いつ延長手続きをすればよいですか。まだ延長手続きをしていません」と尋ねる相談がありました(2025年3月21日の投稿)。相談した人は、退職から1年近くたっていました。
付いた回答は、離職票をすぐハローワークへ持って行くように、というものでした。そのうえで、退職から1年ほど経っているため受け取れない可能性がある、とも書かれていました。
いつから出せるか。離職日の翌日から数えて31日目以降
申請できるのは、「引き続き30日以上働けない」という状態が確定してからです。退職の時点ですでに働けなかった人なら、離職日の翌日を1日目として30日を数え、31日目以降に申請できるようになります。退職後しばらくしてから働けなくなった場合は、その日から30日を数えます。
いつまで出せるか。それでも早めに出す理由
申請できる期間の終わりについて、ハローワークインターネットサービスはこう説明しています。
延長の手続については、引き続き30日以上継続して職業に就くことができなくなった日の翌日以降、早期にしていただくことが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請は可能です
期限そのものは遠く、あとからでも受け付けてもらえます。それでも早めに出したほうがいいのは、延長が認められることと、日数を使い切れることが別だからです。
延長が認められても、働ける状態に戻った時点で、所定給付日数を使い切るだけの期間が残っていなければ、余った日数は受け取れずに終わります。厚生労働省も、申請が遅い場合には延長後の受給期間内にすべてを受給できない可能性があると案内しています。
31日目を過ぎたら、体調のいい日を選んで早めに出してしまうのが得です。
何を用意するか。郵送や代理人でも出せる
用意するのは3点です。
- 受給期間延長申請書(ハローワークでもらえます)
- 離職票(すでに求職の申し込みを済ませているなら受給資格者証)
- 延長の理由を確認できる書類(診断書など)
つまずきやすいのは、診断書などの「延長の理由を確認できる書類」です。病院が遠くて取りに行けないという相談も知恵袋にありました(2026年3月7日の投稿)。返ってきた回答は「初回の傷病手当金が支給された健保からの通知書で代用可能です」でした。
窓口の判断によるので言い切れませんが、診断書が取れないときは手元の書類を持って相談する価値があります。
体調が悪くて窓口まで行けないときは、代理人か郵送でも出せます。ハローワークも「代理人(委任状が必要です)または郵送により提出することもできます」と案内しています。
延長している間、入ってくるお金はない
失業保険の受給期間の延長は、あくまで期間を先へ延ばすだけの手続きで、延長そのものでお金が入ることはありません。傷病手当金が終わったあとに延長の期間が来るなら、その間は無収入になります。
それでも、毎月出ていくお金は止まりません。とくに重いのが住民税で、退職の時期によっては退職直後にもまとまった請求が来ます。金額の目安は退職後の住民税にまとめました。
- 住民税(退職時に天引きの残りが請求され、翌年には前年の収入をもとにした分が届く)
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 家賃・光熱費などの固定費
傷病手当金が入っているうちに、この4つで毎月いくら出ていくかを一度書き出しておくと、延長の期間に入ってからの見通しが立てやすくなります。
国民健康保険料を軽くできる場合がある
出ていくお金を減らせる制度も1つあります。対象になれば、国民健康保険料の計算で、前年の給与所得を100分の30とみなしてもらえます。
対象は次の2つです。倒産や解雇など会社側の事情で辞めた人をハローワークでは特定受給資格者、会社都合とまでは言えないが辞めざるを得ない事情があった人を特定理由離職者と呼びます。
- 倒産や解雇で辞めた人(特定受給資格者)
- 心身の不調など正当な理由があって、自分から辞めた人(特定理由離職者・離職日に65歳未満)
対象かどうかは受給資格者証などに印字される離職理由のコードで決まり、適用は自動ではありません。このコードが出るのは、ハローワークで受給資格が決まったあとです。
療養中でまだハローワークの手続きをしていない段階では、コードもまだ出ていません。受給資格が決まってコードの付いた書類を受け取った時点で、市区町村の国民健康保険の窓口へ届け出てください。







傷病手当金が入っている間は、収入が減っていても入金の時期だけは読めます。読めるうちに失業保険の受給期間の延長を済ませておくと、あとの自分が楽になります。
働けるようになったら、失業保険へ切り替える


主治医から「そろそろ働けそう」と言われても、何から手をつければいいのか分からないですよね。最初の一歩は病院ではなく、ハローワークへの電話です。
動く順番を間違えると、要らない診断書代を払ったり、給付が始まるまでの空白が長くなったりするからです。
切り替えは5ステップで進む
切り替えは、受け取る順番の3ステップでいえば、③失業給付を受け取る部分です。手順は全部で5つあり、上から順に進めれば途中で戻る場面はありません。
- 管轄のハローワークに電話して、必要な書類の名前と様式を確認する
- その様式を主治医に渡して、働ける状態になったことを証明してもらう
- ハローワークで受給期間の延長を解除し、求職の申し込みをする
- 待期7日(申し込み後、失業している日が通算7日。傷病手当金の待期3日とは別物)を過ごし、給付制限があればその期間も待つ
- 求職活動をして、認定日にハローワークへ行き、失業の認定を受ける
最初に電話をするのは、書類の名前も様式も全国で1つに決まっているわけではないからです。先に病院で有料の診断書を取ると、窓口で「これではない」と言われることがあります。
この5つで引っかかりやすいのは、次の3点です。
- 求職の申し込みから先は本人が窓口へ行く(延長の申請だけは郵送や代理人でもできる)
- 延長を出していなかった人も、窓口で事情を伝えれば、さかのぼった延長の申請と、その解除をまとめて進められる
- 傷病手当金は、書類を書いてもらった日ではなく、医師が示した「いつから働けるか」の日付で終わる
延長をあとからまとめて申し出られるとはいえ、後回しにしてよいわけではありません。申請が遅れるほど受給を始められる日も後ろへずれ、所定給付日数を使い切れないまま受給期間が終わるおそれが大きくなります。出していないことに思い当たったら、回復を待たずその日のうちに電話してください。
下調べを完璧にしてから行く必要はない
手続きの細かいところは、窓口で聞きながら進めて大丈夫です。私が失業給付を受け取ったときにいちばん助かったのは、次に持ってくるものをその場で教えてもらえたことでした。制度を分かっている前提で話は進みませんし、用語を覚えてから行く必要もありません。
私が使ったのは失業給付だけで、傷病手当金は受け取っていません。傷病手当金の窓口対応については、加入している健康保険に直接聞くのが確実です。
求職活動の回数の数え方や持ち物、当日の流れはハローワークでの求職申し込みの流れにまとめています。
休職が長くても、失業保険の受給資格をあきらめない
失業給付を受けるには、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。同じ「被保険者期間」でも、健康保険の1年以上とは数え方が違うので、雇用保険のほうはハローワークで確かめてください。長く休職していた人ほど、この2年を数えて「足りない」と早合点しがちです。
数え方には例外があり、厚生労働省はこう示しています。
疾病、負傷、出産、育児などの理由により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった場合は、これらの理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を加えた期間(加算後の期間が4年間を超えるときは4年間が最長)により受給に必要な被保険者期間があるか判断します
病気やけがなどの理由で30日以上続けて賃金が出なかった場合に限り、その日数の分だけさかのぼれます。範囲は最長4年まで広がります。休職が1年あった人なら、離職前3年のうちに12か月あればよいことになります。
さらに、倒産や解雇で辞めた場合や、心身の不調など正当な理由がある自己都合退職なら、必要な期間そのものが短くなります。離職前1年間に通算6か月以上あれば受給資格を得られます。自分で計算して結論を出す前に、離職票を持ってハローワークで判定してもらってください。
もらえるのは何日分か
所定給付日数は、離職理由と雇用保険に入っていた長さで決まります。一般の離職者なら加入10年未満で90日なので、20代の多くはこの区分に当てはまります。
なお「うつ病なら300日」という説明を見たかもしれません。300日になるのは、次の3つがそろった場合です。
- 45歳未満であること
- 雇用保険に入っていた期間(被保険者期間)が1年以上あること
- 障害などで就職が難しい人(就職困難者)と認められること
就職困難者とは、障害などがあって就職が難しいとハローワークに認められた人のことです。その前提は「症状が安定し、就労が可能な状態にあること」です(障害者雇用促進法施行規則1条の4)。療養中の人の話ではありません。
1日あたりの金額と、いつから振り込まれるかは次の記事にまとめました。
受給が始まったあと、短時間のアルバイトを考える人もいます。申告のルールは失業保険をもらいながらバイトはいくらまでで説明しています。
失業保険の待期7日のあと、給付制限で何か月空くか
自己都合で辞めた場合の給付制限は、2025年(令和7年)4月1日以降の離職なら原則1か月です。以前は2か月だったので、待つ期間は半分に短くなりました。離職の理由や過去の離職の回数によっては、これより長くなることもあります。
給付制限がそもそも付かない人もいます。心身の不調など正当な理由がある自己都合退職で特定理由離職者と認められれば、待期7日のあとすぐに支給が始まります。診断書など離職理由が分かる資料は、離職票と一緒に持っていきましょう。
求職の申し込み後に具合が悪くなったら
求職の申し込みを済ませたあとで体調を崩した場合は、進み方が変わります。ここで出てくるのが、雇用保険の傷病手当です。
雇用保険の傷病手当は、求職の申し込み後に15日以上働けなくなったとき、基本手当の代わりに出ます。働けない状態が30日以上続く場合は、受給期間の延長も選べます。健康保険の傷病手当金には戻れないので、どちらの制度かを自分で決めず、ハローワークへ現在の状況をそのまま伝えてください。







ハローワークへ電話するとき、延長の解除と求職の申し込みを同じ日にまとめられるかどうかも聞いてみてください。まとめられれば、体力を使う窓口通いが1回減ります。
まとめ|順番と4つの期限を押さえれば、あとは1つずつ進められる


傷病手当金と失業保険は同時には受け取れず、傷病手当金が先で失業給付があとです。傷病手当金を受け取っている間に失業保険の受給期間の延長を出しておけば、療養に集中している間も失業給付を受け取る権利を守れます。
制度の名前を覚える必要はありません。押さえるのは順番と、途中に出てくる4つの期限だけです。
| いつまで | やること | 過ぎるとどうなるか |
|---|---|---|
| 退職日の前日まで | 待期3日間(療養で働けない日が3日続くこと)を終えておく。退職日も休む | 退職日の翌日以降の傷病手当金が出なくなる |
| 退職日の翌日から20日以内 | 任意継続を選ぶなら申し出る | 任意継続を選べなくなる |
| 離職日の翌日から1年(受給期間) | 失業給付を受け取り終える。働けないなら退職から31日目以降に延長を出す | 所定給付日数が残っていても受け取れない |
| 働けなかった日ごとに、その翌日から2年 | 傷病手当金を申請する | 古い日の分から順に時効で消える |
延長の申請そのものは、延長後の受給期間の最後の日まで受け付けてもらえます。それでも遅れるほど、受け取れずに終わる日数が増えます。
今日やることは、いまの段階で変わります。
- まだ在職中:加入している健康保険に、いまの状況で傷病手当金が出るかを聞く。退職日が決まっているなら、待期3日を前日までに終えて退職日は休む形にする
- 退職した直後:健康保険をどれにするか決める(任意継続を選ぶなら20日以内)
- 退職から30日を過ぎ、まだ働けない:ハローワークへ失業保険の受給期間の延長を出す
- もう働ける:ハローワークへ電話して、延長の解除に要る書類の名前を聞く
どの段階でも、傷病手当金のことは加入していた健康保険が、失業給付のことはハローワークが窓口です。どちらも相談と申請そのものは無料で、体調の悪い日でも電話1本で前へ進めます。
在職中で退職日がこれから決まるなら、日付を入れる前にこの記事の条件を確かめてください。ほかの条件を満たしていても、待期3日と退職日の過ごし方が1日ずれるだけで、退職後の傷病手当金は受け取れなくなります。
体調が戻る時期は、自分では選べません。それでも、受け取れるはずのお金を落とさないための手続きなら、今日のうちに1件だけ前へ進められます。
最後に、療養が終わったあとの話にも少しだけ触れておきます。
主治医から働けると言われて求職の申し込みに進む段階では、求人選びと面接の準備を同時に進めることになります。20代で第二新卒・既卒・フリーターとして次の仕事を探すなら、第二新卒エージェントneoが使えます。求人選びも面接対策も担当者と一緒に進められるので、戻ったばかりの時期に一人で抱え込まずに済みます。
療養中に急いで登録する必要はありません。働ける状態に戻ってからで十分間に合います。
求人紹介から面接対策まで






